F32に注意あそばせ

 マニュアルニッコールレンズに蟹爪と呼ばれる絞り連動ピンが付いているのはみなさんご存知の通り。これがないとニッコールレンズの気分がしない人も多数いるくらい大事なパーツ。しかし蟹爪が役割を果たすのはAi化以前のカメラシステムで、F2で言えばフォトミック、フォトミックS、フォトミックSBファインダーを装着した形態のみ。蟹爪がファインダーの連動ピンと結合することで、レンズの絞り値がファインダーに伝わり露出評価に使われる。通常、蟹爪と連動ピンの結合はレンズ装着の際にレンズを回すか、レンズ装着後絞りリングを回すかすることで簡単に行えるし、蟹爪の連動ピンからの取り外しもレンズ脱着時に自動的に行なえる。

 下の写真は最小絞り値がF22のレンズ(Ai nikkor 105mm F2.5)のレンズ取り外し時の蟹爪の様子を示している。銀色のリングを持ちながらレンズを右回り約1/5回転することでレンズ着脱位置になるが、連動ピンが戻そうとするため絞り位置は大概最小絞りとなる。

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 このレンズの場合最小絞り値はF22なので、下の写真のように絞り位置はF22となっていることがわかる。上の写真のように蟹爪は完全にフォトミックファインダーの外に出ているので、レンズをボディから外すにあたり特に問題は生じない。また逆に、絞り値をF22にした状態でレンズをボディに装着しようとしても蟹爪がファインダに干渉することはないので、この場合も問題ない。

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 問題が生じるのはF32の絞り値を持ったレンズの場合。下の写真は最小絞り値がF32のレンズ(New nikkor 200mm F4 の純正Ai化レンズ)のレンズ着脱位置状態。蟹爪がファインダの外に出ておらず、この状態でレンズを取り外そうとすると爪がファインダに干渉し、爪やファインダにダメージを与える可能性がある。また逆に、レンズの絞り値をF32とした状態でレンズを取り付けようとすると、この場合にも爪とファインダの干渉が生じる。

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 下の写真はレンズ着脱位置の絞りリング様子。レンズを右周りに回すと連動ピンが絞りリングを引き戻そうとするため最小絞り値F32の状態になっている。

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 この状態での取り外しは危険なので、絞りリングをF22以下まで戻して蟹爪をファインダから露出させた状態で取り外しを行う。下の写真はF32→F22まで絞りリングを回した状態。これであれば問題なく取り外せる。

 

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 手持ちの爪付きレンズでF32があるのは上記レンズのみ。しかし、ここを見ると最小絞り値が32以上のレンズは他にも結構ある。大事なフォトミックファインダーやレンズに傷をつけないよう、F32のレンズには注意あそばせ(笑)