またNikon F2

 20年ほど前にNikon F2フォトミックAを入手し、ニッコールレンズもかなり揃えたことがあった。当時は中古カメラブームで結構な値段がついていたなぁ。Nikon F2フォトミックは学生の頃欲しかったカメラだったけど高価で手が届かず、仕方なく中古の他社のカメラを使っていた。社会人になってNikon F4を購入しかなり満足していたけど、F2はずっと心のどこかで気になる存在だった。中古カメラブームがやってきてF2に関する情報が溢れ出すと、どこかに燻り続けていた欲望が爆発しついにフォトミックA購入に至った。

 フォトミックAはCdSセルを用いているため露出精度に不安があったけど、購入したものはポジ撮影にも使える良個体だった。しかし2004年くらいの或る日のこと、不注意からの落下によりカメラ右肩部を損傷し、修理に出したけど完全には治らず変形痕が残った。この頃はフィルム時代からデジタル時代への移行期だったこともあって、これを機会にF2とレンズの大部分を売り払い、デジタルカメラへ移行して行くこととした。これでF2との付き合いわ終わるはずだった。

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Nikon F2 フォトミックAS

 ところが、デジタルカメラは便利だけどF2を使っていた頃ほど楽しくない。これは一体どういうことだろう。今となってはフィルムカメラはずいぶん安くなっているし、やっぱりもう一度フィルムに戻ろうかな。きっとこれが最後のチャンスだろう。

 今度買うのであればフォトミックASにしようと心に決めた。学生の頃欲しかったカメラだし、センサはシリコンフォトダイオードのため経年劣化が起きにくく露出精度が高い。反面故障すると治らないそうだけど、故障の話はほとんど聞かない。そんなわけで、カメラのキタムラをあたってみたけど今ひとつ気に入ったものがなく、結局ヤフオクで落札となった。使用感はあるけど当たりもなくまずまず綺麗なブラックの個体だった。この後、猪苗代カメラ工房さんへオーバーホールを依頼し各部調整をしてもらった。幸いなことに露出計はOKとのことだった。

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ソフトシャッターレリーズの違い

 入手後ソフトシャッターレリーズ(AR-1)を購入しようとしたが、既に廃品種となっていたのでヤフオクから入手。400円の代物だったと思うがプレミアで2,000円もした。その後防湿庫の中から20年前に使っていたAR-1が出てきて自分の馬鹿さ加減にガックリorz。しかし良く見るとこの2つのAR-1は刻印の大きさが異なっており、まあこれはこれで良いかと無理矢理納得。また、もう一台F2が増えても使えるし(^^)。

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 一見してわかるフォトミックAとの違いは縮緬塗装。フォトミックAと比べ高級感がある。それから、ファインダー上面の採光窓手前にLEDランプがあって、アイピースシャッタを閉じた場合に限って適正露出の際にランプが点灯するようになっている。フォトミックAでは露出系指針を外部から確認できたが、フォトミックASではLED表示で確認するようだ。また、LEDランプ右側にはイルミネータ用スライドバーがあり、ファインダー内のシャッター速度表示が赤いLEDで照明される。絞り値は直読式なので照明されない点が残念(フォトミックSBでは絞り値もファインダー内の表示板を用いているため照明されるもよう)。

 

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 それからこれはあまり使うことはないと思うけれど、露出計が2〜10秒に対応しており、通常のシャッター速度表示の上にオレンジ色表示のもう一つのシャッター速度ダイヤルがある。通常のシャッターダイヤルをバルブに合わせ、ASA感度ダイヤル上のボタンを押すと、オレンジ色の速度ダイヤル(2〜10秒)を回すことができるようになる。

 露出表示はフォトミックAファインダーの指針式と異なり、LED(- o +)の5段階表示。中央のoのみが点灯するのは±0.2eVなので十分な精度を持っていてポジ撮影でも問題なさそう。昔使っていたPentax MXも(赤、黄、緑、黄、緑)の5段階表示だったけれど適正露出の緑範囲は±0.5eVと粗いものだった。ただし、定点一致式指針のアナログ表示のフォトミックAに比べ、LED表示は定点からのずれ量がわかりにくい点はる。まあ慣れの範囲内だけど。

 購入直後はプレビューボタンが固かったり、モルトがボロボロだったり、シャッタ速度が不正確だったり、シャッタ音に金属音の余韻がついたり(ミラーボックス横のスプリング音をダンピングするモルトがへたると発生する)していたが、オーバーホールで各部動作が快調になった。シャッタ音もバシッ、という感じで歯切れの良い音がする。猪苗代カメラ工房さんに感謝。

 まずは定番のAi nikkor 50mm F1.4を装着して楽しんでいる。AFカメラのファインダースクリーンと違って暗いスクリーンだけど、F1.4とF2.0のボケの違いが明瞭に反映されるフォーカシング精度の高い良質なもの。フォーカスリングを回してゆくと焦点面にスッと対象物が現れる感覚はとても楽しく、久しぶりにF2を手に入れこの感覚が戻ってきた。20年前と違いフィルムもずいぶん廃品種になり、また高価格になったけれど、できる限り楽しんでゆきたいな。